ビットコイン(BTC)価格と密接に関係している採掘難易度調整(ディフィカルティ)とマイナー損益分岐点の面から、値動きの予測をし、ビットコイントレードに生かしていくという考察をご紹介します。
ビットコインをお店で売っているリンゴだと仮定すると以下のようになります。
ビットコイン | お店で売っているリンゴ |
---|---|
ハッシュレート | リンゴを収穫する効率性(速さ) |
難易度調整 | 直近のハッシュレートを元に、リンゴを収穫するコストと速度を調整されること |
損益分岐点 | お店が赤字にならないギリギリのリンゴ小売価格 |
半減期 | 果樹園のリンゴの木の本数が半分になるイベント |
という感じです。
BTC採掘難易度調整がリンゴ、もといビットコインの価格に大いに影響してくることは想像に難くありませんね。
ビットコインの採掘難易度調整とマイナー損益分岐点から値動きを読む戦略は、ビットコインのトレーダーなら知っておくべき指標なので是非理解しましょう。
ビットコインの採掘難易度調整とは
ビットコインの採掘難易度(=ディフィカルティ)とは、マイニング(採掘)によりブロックを生成する(ナンスを算出する)難易度のことです。
ハッシュレート(Hash Rate)は、ビットコインのマイニング(採掘)速度を示した数値です。
簡単に言うと、ビットコインのマイニングがどれくらい簡単かを示した数値です。
一般的に、マイナー(マイニングを行う人)が増えるほど、ネットワーク全体の計算量も上がり、ブロックの生成時間も速くなります。
ビットコインでは1ブロックの生成時間が平均して 10分に1回になるように、2週間に1度、あらかじめ組み込まれているアルゴリズムに基づき調整・変更されています。
※厳密に10分ではなく、なるべく10分
マイニング競争が激化or機器の性能アップなどの要因で、過去2週間の平均が 10 分より短ければ難易度を上げ、逆に長ければ難易度を下げます。
BLOCKCHAIN社が提供するグラフを見れば、ビットコインの採掘難易度を過去チャート推移で確認することができます。
また、次回の難易度調整の日にち、予想変動率を調べるには、「diff.cryptothis.com」サイトで確認できます。
採掘難易度の上昇/低下で起こるリスクについて
ビットコインの採掘難易度の上昇によってセキュリティが高まる効果がありますが、急激な上昇はハッシュレートの減少から送金遅延などの不具合が起こりやすくなるというリスクもあります。
採掘難易度上昇によるセキュリティ強化
ネットワーク計算力の過半数(51%以上)を占めることで行われる51%攻撃という、偽のチェーンを生成する不正行為を防ぐことができます。
採掘難易度の上昇によってビットコインのセキュリティ面がより強固になるメリットがあるので、将来的にも難易度は上昇していく見込みです。
急激な上昇はリスクを生む
ただ、ビットコインの採掘難易度が大きく上昇してしまうと、より高性能なマイニングマシンが用意できない中小マイナーはマイニング競争で勝てなくなってしまいハッシュレートが減ってしまいます。(寡占もおきる)
ビットコインのハッシュレートが減ると、送金遅延などが起こりやすくなる可能性が高まります。そのため、難易度調整は急激には起こらず緩やかな推移になります。
- マイニング(ブロック生成)速度は10分に一回になるよう調整されている。
- 難易度調整は2週間に一度行われる。
ビットコインのマイナー損益分岐点とは
ビットコインの損益分岐点というのは、いわば、ビットコインの採掘原価です。
損益分岐点を下回ってしまうとマイナー(採掘者)は赤字となるのでマイニングの停止・廃業に陥ってしまいます。
先にも述べたように、マイナーが減ると(ハッシュレートが下がると)51%攻撃を受けやすくなりセキュリティリスクが高まります。
ビットコインのブロックチェーンの堅牢性が低下するということはそれだけで価格下落要因になり得ます。
なので、マイナーやビットコイン開発者たちは損益分岐点を割るような値動きにはしないよう、新コインの売りを控えたりレンディングに回したり価格を保つ努力をするはずです。
ビットコイン損益分岐点の調べ方
損益分岐点は常に変化しており、使用しているマイニング機器の性能、稼働している地域の電気代など(中国四川省、内モンゴル新疆ウイグル自治区などは安い)によっても違うので、明確な値の算出は難しいのですが、@tainokoさんが開発した神インジ「Maison (Free)」を使えば、TradingViewチャートにおおよその損益分岐点を表示してチェックすることができます。これは便利…。(TradingView有料プランにすれば保存できるインジが増えます)
上のチャートに描画している損益分岐点の価格(緑線)は、最強のサポートラインと言っても過言ではないでしょう。
チャートを見ると、2020年半減期後の損益分岐点は18500$辺り。損益分岐点は上昇し、マイナーの多くは赤字運営になるようです。
ちなみに、Maisonの改良版、Bitmain製のマイニング機(ASIC)の採算ライン(半減期対応)を普及機のS9iと、半減期後の普及を想定した3機の計4機種で表示切替ができる「Bitcoin ASIC Cost(無料)」が公開されています。これによると、以下のように推測できます。
半減期後のデータも表示できるようにアップデートされています。これを見ると、最新のAntminer S17+以外すべての機種で採算割れの状況となっています。価格上げるしかないですね。
マイナーの分布を調べる方法
ちなみに、現在のビットコインマイナーの分布はBLOCKCHAINの以下のページで知ることが出来ます。
ビットコイン価格と難易度の比較から分かること
ビットコインの誕生以降、採掘難易度は右肩上がりで上昇しています。
2017年末のバブル頂点からの下落相場でも難易度は上昇を続けているのが分かりますね。
2018年11月の暴落で初めて難易度が下がりましたが、底打ちした後はまた上昇に転じています。
採掘難易度の上昇はマイナーの増加によって起こるものなので、2017年末にBTC価格が下落してもビットコインは人々から関心を集め続けていたことがわかります。
この2018年末に難易度が下がった背景には、マイナーの採掘損益分岐点を割ってしまったことにより、採算が取れず休業に追い込まれるマイナーが続出した結果だと言われています。
上の画像のチャート比較を見てもらえばわかる通り、BTC価格と難易度調整には大した相関はないように見えます。
ビットコイン価格の値動きに合わせて、難易度がそれについていく、というような関係であると思います。
つまり、難易度調整によって恣意的に価格が操作されていることはない、ということが推測できます。
ただ、完全な相関ではないですが、基本的に難易度と価格は同じ方向に動くことが多いです。
つまり以下のような関係です。
難易度上昇 | 採掘コストが上がるので、ビットコイン価格は上昇。 |
---|---|
難易度低下 | 採掘コストが下がるので、ビットコイン価格は下落(してもマイナーは耐えられる)。 |
半減期とハッシュレートの関係から値動きを予測
今まで半減期は2012年、2016年、2020年で実施されました。
半減期とは1ブロック生成辺りのマイニング報酬が半減するというプログラムに組み込まれたものです。
つまり半減期の前にマイナーはより多くの採掘をしたいと考えるので、ハッシュレート採掘難易度が上昇する傾向にあります。
採掘難易度が上がるということはビットコインの原価も上がるということなので、価格も上がりやすくなります。
ビットコイン難易度調整が相場に影響した時の例。
半減期前後(2012年、2016年、2020年)のハッシュレートの増加率を比較した画像を見てもわかる通り、半減期周辺ではハッシュレートが上がっていることが確認できます。
ハシュレート(採掘難易度)の観点から見ても、半減期周辺ではビットコイン価格が上昇しやすい、と結論付けることが出来ます。
BTC採掘難易度の大幅下落はBuyサイン?
2021年7月にビットコインの採掘難易度低下が史上最高値である-27.9%を記録しました。(中国のマイニング業者規制が原因)
ビットコインのハッシュレートが低下→難易度が低下するということは前述したとおり、ブロックチェーンの堅牢性低下に繋がるのでBTCにとって良いことではありません。
しかし、以下の画像の通り、ビットコインの採掘難易度調整がマイナス11%以上だったのは過去10回ほどあるのですが、 そのうちのほとんどが底値圏で発生しています。
つまり、難易度調整大幅低下は、強いビットコインのbuyサイン、上昇シグナルとなっている可能性があります。 難易度が下落する理由はさまざまなので、必ずではないが期待が持てますね。
Bitcoin Difficulty Ribbonを使ったトレード法
また、上述した見立てとは少し違う視点で、ビットコイン難易度にちなんだインジケーターを使ったトレード手法をご紹介します。
「Bitcoin Difficulty Ribbon」というインジです。
以下のチャートは、おそらくビットコイン週足チャートのログスケール(対数チャート)にこのインジを表示したものです。
Bitcoin Difficulty Ribbonは、ビットコインの値動きに対するマイナーの売却圧力の影響について可視化しています。
リボンはビットコインネットワークの難易度の単純移動平均で構成されているので、難易度の変化率を簡単に確認できます。
採掘難易度が上昇すると、資金力のない弱小マイナーは操業を続けるためにビットコインを売却していくことになりますが、体力のあるマイナーは比較的売却しなくともマイニングを継続できます。
つまりBTCの採掘難易度の上昇は、売り圧力の低下と価格上昇の余地を広げることに繋がります。
Bitcoin Difficulty Ribbonで重要なポイントは、リボンが圧縮されるゾーンです。
このリボンが圧縮されるか下落時反転した場合は底がかなり近いので最適な買い場とみることが出来ます。
このリボンの圧縮具合は、ビットコインの半減期前後にも顕著に表れています。半減期による報酬半減により、売り圧を生み出す弱小マイナーが廃業したため?です。
今現在の強気相場は2016年よりも2012年にかなり似ているそうです。つまり、上昇余地がより大きいということですね。
リボンの収縮が見られた場合、ビットコイン週足以上の時間軸で見れば「買い」だという見立てができます。
ビットコイン損益分岐点のまとめ
ビットコイン難易度調整とマイナー損益分岐点から値動きを読むトレード戦略、ということで情報をまとめてみました。
採掘難易度は今後も以下の理由により上昇していくと考えられます。
- 大口/小口マイナー参入による競争激化
- 半減期によるマイニング報酬BTCの半減
難易度上昇によってセキュリティが向上し、採掘原価の上昇によってビットコイン価格も上昇する、という正のスパイラルになるということですね。
よく考えられているんですね~。
この解釈が必ずしも正しいかは実際になってみないと分かりませんが、今後のビットコインや周辺環境の動向にますます目が離せませんね。
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