ストックフロー比率をもとに算出されたS2Fモデル(理論)チャートというもので、3年ぶりにビットコインに強気の上昇シグナルが点灯したというのが話題になりました。
下の画像のように、トレンドの方向と強さを表すドット色が2020年6月1日、強い上昇トレンドを示す赤になりました。
図を見た感じでは、赤が点灯した価格帯(今回でいえば2020年6月の最低値9000ドル前半にはもう戻ってこないように見えます。
つまり9000ドルを背にロングポジションを持っていれば明るい未来が待っている…ってそんなに相場は簡単に儲けさせてくれるようには本来出来ていません。
このビットコイン相場の楽観的なモデルの根拠や信ぴょう性について調べました。
S2Fモデル(理論)チャートとは
ストック・フロー比率(S2F)は、「S2F=市場に存在する量(ストック)/年間供給量(フロー)」で計算され、ゴールドやシルバーなどコモディティ商品の希少性と価値を測るモデルとして利用されるものです。(BTCの算出方法は後述)
世の中に存在するほとんどの商品は、需要が高まれば生産量(供給量)も比例して増やすことができるのもなので、結果的に、流通量が増えれば価格が下落する原理になっています。
しかし、金(ゴールド)などの一部の希少性が高い商品は、市場に存在する量(需要)に対して生産可能な量(供給)を増やすことができないので、インフレによって価格が落ちることがありません。
PlanB氏が提唱するビットコイン相場のS2F分析によると、2009年12月から2019年2月の相場データをもとにプロットしたところ、一定の規則性を発見。
S2F(ストックフロー比率)と時価総額の両方について対数をとり線形回帰を行うと、S2Fと時価総額の間に統計的な有意性が確認されました。
2020年5月12日に半減期を迎えたビットコインですが、半減期のたびにストックに対するフロー、つまりストックフロー比率が2倍になり、これによって長期的には価格が上昇しつづけるという理論になっています。
S2Fモデルを用いた算出では、2020~2021年のビットコイン理論価格は1BTC=10万ドル(1100万円)を突破することになるとのこと。
ストックフロー比率によるS2F理論価格の根拠
以下の式で算出される各商品のS2Fを測ると、金の希少性が説明できる。計算によると、金のS2F比率は62となる。これは、金の現存量と同量を生産するのに62年を要することを意味しているとのことです。
プラチナ、パラジウム等は貴金属の中でも需要が増えれば生産を増やすことができるものなので低い値になっています。
ビットコインの発行枚数は、プログラム上で上限2100万枚と決められていて、半減期のたびに新規発行枚数が半減していくというルールがあるので、S2Fは半減期が起こる4年ごとに倍々に高まっていくことになります。
このモデルによると、BTCのS2Fは半減期後、約25から約50に上昇(ドイツ・バイエルン銀行はBTCのS2Fを約53と計算出)しました。
それに伴って、理論価格も急上昇し、BTC時価総額は半減期後の2020年5月に1兆ドルに達し、1BTCあたり55,000ドル(約600万円)を突破。(未達)
さらに、2024年には28万8000ドルに到達すると予測しています。
以前、半減期に関する記事で紹介した以下の「過去チャートパターンと価格、天井と底に規則性」でも、近からず遠からずな値が出ていました。
この仮説によると、ビットコイン半減期後のBTC価格は、
- 2021年5月~12月=最高値1BTC 1250万円
- 2023年中旬迄=底値1BTC 500万円レンジ
- 2025年5月~12月=最高値1BTC 3900万円
ツイッターアカウントS2F Multipleでは、S2Fに基づいたBTC理論価格を毎日更新している。
ビットコインの理論価格の計算式
仮想通貨アナリストのPlanB氏は、S2Fを用い以下のようにBTC理論価格を求めている。
今までに失われたBTCを考慮に入れ、
という式で算出しているということです。
S2FモデルをTradingViewに表示する方法
BTC情報アラート開発者のTainoko氏が開発したTradingView用インジケーター「Bitcoin S2F(X)」を追加すると、現在のビットコイン価格にS2Fのシュミレーションを表示できます。
※週足以上、ログスケール表示推奨
S2Fモデルをチャートツールで確認する方法
Bybtの「Stock-to-Flow Model」、Glassnodeなど多くのデータ分析プロバイダーで確認できます。
S2FXモデル(Stock-to-Flow Cross Asset)も登場
S2Fモデルを提唱したPlanB氏によって、S2Fモデルを他アセット(金と銀)とより正確に比較する為の改良版S2FXモデル(Stock-to-Flow Cross Asset)が提唱されました。
ざっくりと解説すると、ビットコインが半減期を迎えるたびにストックフロー比が倍になるわけですが、(BTCの2021年現在のストックフロー比率は50)
4年ごとの半減期を経るたびに倍化したビットコインのストックフロー比から現在のBTCの性質の変化を考慮し、より正確な予測をしようとしたものです。
- 概念実証:ビットコイン論文の発表後の段階
- 支払い:USDと同等な段階(1 BTC≒1 USD)
- E-Gold:1回目の半減期(2012年11月28日)後の段階(1 BTC≒1オンスの金)
- 金融資産:2回目の半減期(2016年7月28日)後の段階(1日あたり10億ドルの取引量、日本とオーストラリアで法的な扱いが明確化、CMEとBakktによる先物市場の確立)
この段階をドル換算で時価総額で算出すると以下になります。
段階 | SF値 | 市場価値(USD時価総額) | |
1 | 概念実証 | 1.3 | 1,000,000 |
2 | 支払い | 3.3 | 58,000,000 |
3 | E-Gold | 10.2 | 5,600,000,000 |
4 | 金融資産 | 25.1 | 114,000,000,000 |
まあつまりこれによると、2024年には1BTC=288,000 USD(約3071万円)に到達するとのことで、価格が上方修正された感じですかね。(BTC S2Fは2020年から2024年に56になる)
S2Fモデルを動画でも解説しています
S2Fモデル理論の注意点
このS2Fモデル(理論)には問題点も存在するとのことです。
供給面のみしか考慮されていない
S2Fモデルの理論値は、過去のビットコイン価格とストック/フロー比率から統計的に事後的に算出された理論価格にすぎず、BTCの新規発行という「供給面」のみを考慮して算出されたものです。
つまりこのモデルは実需という面とマイナーの撤退行動などを考慮していないという指摘があります。(イーサリアムの開発者ヴィタリックが言ってた)
理論価格が将来無限大になってしまう
S2Fモデルによると、半減期事にストックフロー比率は倍々になっていくため、理論価格は最終的に無限大に収束するほど大きくなってしまいます。
無限に価格が上がるということは現実的にあり得ないため、どこかで無理がくる(上昇は失速する)という反論があります。まあ、その通りですよね…。
実需が相関するとは限らない
線形回帰では、S2Fが高まれば高まるほどBTCの時価総額が高まるという結論が導かれてしまう。(世界の経済規模を無視した数値になる)
実際には、マイナーの撤退が相次げばビットコインのブロックチェーンの価値が棄損するリスクもある。
過去に理論価格の半額になったことも
過去のチャートを見てみると、実際のビットコイン価格がS2Fモデルの理論価格を大幅に下回ることがありました。
例えば2018年11月に起こったビットコインの急落時(約8000ドル→4000ドル)には、実際価格が理論価格の半分ほどになったこともあります。
S2Fモデル理論とBTC価格のまとめ
ストックフロー比率(S2Fモデル)を用いたビットコイン理論価格が10万ドル(1100万円)を超える理由について解説してみました。
S2Fモデルに基づいた理論価格は、今のところビットコインチャートに当てはまっていますが、今後の値動きが必ずしもこの理論通りになるとは限らないと、イーサリアム開発者などの識者も言及していること。
供給面のみから算出されたものなので実需が伴うかは不明であり、過去に理論価格の半分まで価格が一時的に下落したこともあることが分かりました。
しかし、長期の時間軸でビットコインの値動きを見た場合には今のところシミュレーション通りに価格が推移しており、少なくとも、2024年の次の半減期を迎えるころまではS2Fモデルに忠実な値上がりでも経済規模的に自然であると考えます。
ビットコインが長期で値上がりすると予想している方には参考になるモデルですね。
コメント欄
S2Fが当たり続ける場合
人間には自由意思は無いという実証になるのでは