イールドファーミング(yield farming)とは、DEX(Decentralized Exchange:分散型取引所)に保有する仮想通貨を預け入れて、報酬を得るシステムのことです。
DEXは管理者がいない非中央集権的に運営されており、スマートコントラクトによって実装されます。
得られる報酬は、預け入れるプロジェクトのガバナンストークンです。
イールドファーミングの仕組み
イールドファーミング(yield farming)の仕組みを以下の3つの項目で解説します。
- DEX(分散型取引所の仕組み)
- 流動性マイニング
- イールドファーミングはDEXを支える重要な要素
DEX(分散型取引所の仕組み)
イールドファーミングの仕組みを理解するためには、DEX(分散型取引所)について理解する必要があります。なぜなら、DEXはイールドファーミングの基礎部分であるからです。
DEXとはDecentralized Exchangeの略で、分散型取引所と略されます。分散型取引所と聞いてもイメージしにくいので、CEX(中央集権型取引所)と対比しながら解説します。
CEXとDEXの対比表は以下の通りです。
CEX | DEX | |
---|---|---|
名称 | Centralized exchange | Decentralized Exchange |
日本語訳 | 中央集権型取引所 | 分散型取引所 |
運営者 | あり | なし |
取引所 | ・Coincheck
・bitFlyer |
・Uniswap
・PancakeSwap |
手数料 | あり(主に人件費) | あり(ガス代) |
取り扱い通貨 | ・フィアット通貨
・仮想通貨 |
・仮想通貨 |
個人情報 | 必要 | 不要 |
取引記録 | 企業のデータベース | ブロックチェーン |
取引 | ・販売所
・取引所 |
スマートコントラクトによる自動決済 |
DEXは、管理者がいないためスマートコントラクトにて実装されています。仲介者となる企業がいないため、取引はユーザー同士で行われ、仲介手数料は発生しません。
流動性マイニングとは
流動性マイニングとは、DEXに流動性を提供し、報酬として取引所のオリジナルトークンを獲得する行為のことです。
流動性を提供するとは、保有している仮想通貨をDEXに預けることで、預け入れる仮想通貨が多ければ多いほど流動性が高まります。なぜなら、取引できる仮想通貨の量が増えるためです。
マイニングとは、コンピューターの作業に協力することで報酬を得ることを指します。つまり、DEXに仮想通貨を預けることで、トークンを得ることです。
イールドファーミングはDEXを支える重要な要素
イールドファーミングはDEXを支える重要な要素です。理由は「イールドファーミング」という言葉を分解することで理解できます。
イールドとは「yield:利回り」で、ファーミングは「farming:農耕」という意味です。
銀行は利用者から集めたお金を元に投資や融資などで利益を出します。DEXも同様にユーザーから集めた仮想通貨を元に運営しています。
つまり、DEXはユーザーから預け入れ(farming)られた仮想通貨を元に取引を行っており、ユーザーに預け入れを行ってもらうために利回りとしてガバナンストークンを提供しているのです。
だから、イールドファーミングはDEXを支える重要な要素となります。
イールドファーミングの特徴
イールドファーミングの特徴は2点です。
- 高い利回りを得られる
- 受け取れる報酬はガバナンストークン
高い利回り
イールドファーミングの特徴のひとつが、高い利回りを得られることです。具体的には、数十%〜数百%になることもあります。国内の仮想通貨取引所では、GMOコインがステーキングを行っており、ステーキング報酬は年率2.1%〜4.7%と言われております。ステーキングと比較するとイールドファーミングの利回りの高さがわかります。
一方で、利回りはハイリスク・ハイリターンですので必ずリスクを伴います。リスクについては後述します。
受け取れるのはガバナンストークン
2つ目の特徴は、利回りとして受け取れるのはDEXの場合ガバナンストークンであることです。
ガバナンストークンとは、プロジェクトの運営に関わることができるトークンであり、Uniswapは「UNI」、PancakeSwapは「CAKE」となります。
イールドファーミングの始め方
イールドファーミングの始め方は、以下のステップとなります。
- 国内暗号資産取引所でアカウントを作成する
- MetaMaskを作成する
- DEXに接続し仮想通貨をプールする
国内暗号資産取引所でアカウントを作成する
まずは国内暗号資産取引所でアカウントを作成します。
なぜなら、イールドファーミングを行うためには、仮想通貨を入手する必要があるからです。ちなみに国内でおすすめはbitbank(ビットバンク)かbitflyer(ビットフライヤー)です。
アカウント作成するためには必要な項目は以下の通りです。
- メールアドレス
- 本人確認書類
国内暗号資産取引所の公式サイトにアクセスし、メールアドレスを登録します。登録したメールアドレスに送られてきたURLからアカウントを作成し、本人確認を行います。本人確認で利用できるものは以下の通りです。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 在留カード
本人確認書類をスマホで撮影し、取引所へ申請することで完了します。アカウント設定が終了する、イールドファーミングで利用しやすいイーサ(ETH)を購入しておきましょう。
MetaMaskを作成する
続いては、MetaMask(メタマスク)を作成します。なぜなら、国内暗号資産取引所からDEXには直接預け入れることができないためです。MetaMaskは仮想通貨のウォレットであり、このウォレットを経由してDEXへ預け入れます。
MetaMaskを作成する手順は以下の2つです。
- MetaMaskをインストール
- MetaMaskのアカウント設定
MetaMaskに対応するブラウザは、「Google Chrom」「Firefox」「Brave」で、インストールする手順は、以下の4stepとなります。
- MetaMask公式サイトにアクセスする。
- 拡張機能を追加
- パスワード設定
- リカバリーフレーズの設定(誰にも教えてはいけません)
MetaMaskがインストールできたら、アカウント設定して完了です。アカウント設定ができたら、国内取引所で入手したイーサ(ETH)をウォレットに送金しておきます。
DEXに接続し仮想通貨をプールする
MetaMaskウォレットをDEXに接続し、仮想通貨をプールします。
イールドファーミングで用いるプラットフォーム
今回の記事では、イールドファーミングで用いる9つのプラットフォームを紹介します。
- Uniswap
- PancakeSwap
- Curve Finance
- Compound Finace
- MakerDAO
- Synthetix
- Aave
- Yean.fainance
- Balancer
Uniswap(ユニスワップ)
まずは、DEXの中で最も有名と言われているUniswapから解説します。
プロジェクト名 | Uniswap |
トークン | UNI |
公式サイト | Uniswap 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
TVL | Uniswap TVL |
Uniswapは、「お金の交換」ができるDEXです。そして、「Uniswap」などのプロジェクトは、「AMM:Automated Market Maker」を開発しましたので、先にAMMについて解説しておきます。
「AMM:Automated Market Maker」は、日本語では「自動マーケットメーカー」と略されます。つまり、管理者不在で自動的にコインを交換する仕組みのことです。言い換えると「株式取引が自動化されている」と理解するとイメージしやすくなります。
UniswapのAMMは、計算式で表され、以下の数式です。
- x*y=k (*は掛け算)
xとyは、ペアとなる仮想通貨であり、kはプールされている一定の金額となります。
例えば、ETH-USDTといったプールに預け入れた仮想通貨が交換されると報酬を得ることができます。
しかし、イーサリアムチェーンを利用している場合は、ガス代が高い可能性があり、収益を得るためには高額を預け入れる必要があります。
PancakeSwap(パンケーキスワップ)
続いては、PancakeSwapです。
プロジェクト名 | PancakeSwap |
トークン | CAKE |
公式サイト | PancakeSwap 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
PancakeSwapも「お金の交換」ができるDEXです。PancakeSwapは、バイナンススマートチェーン(BSC)上に構築されたDEXであるため、イーサリアムチェーン上に構築されているDEXよりもガス代が割安になる可能性が高くなります。
Curve Finance
次は、「Curve Finance」です。
プロジェクト名 | Curve Finance |
トークン | Dai |
公式サイト | Curve Finance 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
TVL | Curve Finance TVL |
Curve Financeの強みは、ステーブルコイン同士を交換することです。例えば、米ドルに連動した「USDT」を同じく米ドルに連動している「Dai」に交換するケースがあります。なぜ、同じ米ドルと連動している通貨同士で交換する必要があるのでしょうか。
それは、例えば以下の利回りのケースであればわかりやすくなります。
- USDTの利回り:5%
- Daiの利回り:10%
上記の場合ですと、USDTでイールドファーミングするよりもUSDTをDaiに交換してDaiでイールドファーミングする方が収益が高くなります。
Compound Finance
続いては、「Compound Finance」です。
プロジェクト名 | Compound Finance |
トークン | COMP |
公式サイト | Compound Finance 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
Compound Financeでは、仮想通貨を貸したり、借りたりできます。Compound FinanceのAPPの画面は以下の通りです。
左側の「Dai」や「ETH」は、貸し出した時の利息が「APY」に記載されています。右側の「Dai」や「ETH」は、借りる時の金利が「APY」に表示されていますが、ある一定額を貸し出していないと借りることはできません。
MakerDAO
次は、「MakerDAO」です。
プロジェクト名 | MakerDAO |
トークン | ・Dai
・MKR |
公式サイト | MakerDAO 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
TVL | MakerDAO TVL |
MakerDAOは、米ドルに連動している「Dai」を発行することができます。発行するためには、MakerDAOに仮想通貨を預け入れる必要があり、預けた対価としてDaiが発行されます。
もう一つのトークンは、「MKR」です。MKRは、MakerDAOの運営に関わるガバナンストークンとして機能しています。
Synthetix
続いては、「Synthetix」です。
プロジェクト名 | Synthetix |
トークン | SNX |
公式サイト | Synthetix 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
TVL | Synthetix TVL |
Synthetixは、DEXであり合成資産を形成するためのプラットフォームです。Synthetixを利用することで、仮想通貨だけでなく法定通貨、株式、金、石油などの価格と連動するトークン(合成資産)を発行し、取引することができます。
Aave
次は、「Aave」です。
プロジェクト名 | Aave |
トークン | AAVE |
公式サイト | Aave 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
TVL | Aave TVL |
Aaveは、Compound Financeと同様に仮想通貨の貸し借りができます。Aaveの特殊機能に「フラッシュローン」というものがあります。フラッシュローンとは、取引所での価格差を利用して利益を得る方法です。この方法を利用すると担保なしでローンが使えます。
具体的には、あるコインが、2つの取引所で異なる価格をつけているようなケースです。
- 取引所A:1ドル
- 取引所B:2ドル
あるコインを取引所Aで100枚を100ドルで購入し、購入したあるコインを取引所Bで売ると200ドルとなります。Aaveはイーサリアムチェーン上で構築されているプロトコルになりますので、ガス代が発生するので注意が必要です。
Yearn.finance
次は、「Yearn.finance」です。
プロジェクト名 | Yearn.finance |
トークン | YFI |
公式サイト | Yearn.finance 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
TVL | Yearn.finance TVL |
Yearn.financeは、最適なプラットフォームを提案するDEXです。世の中には多くのDefiがあり、今回の記事でも9つのDEXを紹介していますが、それぞれの特徴や利回りを把握することは困難です。
Yearn.finance「Valuts」と呼ばれる金庫のような場所に、仮想通貨を預け入れておくと、最適な運用を行ってくれます。
Balancer
最後は、「Balancer」です。
プロジェクト名 | Balancer |
トークン | BAL |
公式サイト | Balancer 公式サイト |
公式Twitter | |
公式Discord | Discord |
TVL | Balancer TVL |
Balancerは、預け入れているプールの中身を自動調整してくれるDEXです。公式サイトには、Balancerは最も柔軟で多用途な自動マーケットメーカーであることが謳われています。
イールドファーミングのリスク
ここからは、イールドファーミングのリスクを4点取り上げます。
- 変動損失(インパーマネントロス)が起きるリスク
- 手数料が上がるリスク
- ハッキングのリスク
- 詐欺のリスク
変動損失(インパーマネントロス)が起きるリスク
変動損失(インパーマネントロス)とは、仮想通貨をプールに預け入れた時と比較して変動した損失のことを指します。つまり、入金時と比べて出金時のドル建て金額が減少しているということです。
イールドファーミングでハイリターンを獲得するためにはハイリスクが伴いますので注意が必要です。
手数料が上がるリスク
イーサリアムチェーン上に構築されているDEXではより注意が必要です。なぜなら、コンセンサスアルゴリズムにPoW(Proof of Work)を採用しており、ガス代(手数料)の変動が大きいためです。今後イーサリアムチェーンのアップデートでPoS(Proof of Stake)に移行することでガス代は低く抑えられる予定です。
いずれにしても、利回りとガス代を常にセットで考慮する必要があります。
ハッキングのリスク
DEXだけでなく仮想通貨関連では、常にハッキングリスクに晒されています。なぜなら、ブロックチェーンはオープンソースであり、誰でも閲覧することが可能であるからです。また、スマートコントラクトのバグによりハッキングされることもあります。イールドファーミングについてもあくまでも自己責任で実施することが重要です。
詐欺のリスク
イールドファーミングだけでなく、ブロックチェーン関連は常に詐欺に合うリスクが伴います。それぞれのDEXサイトのURLについても常に公式サイトであるかどうかの確認が必要です。万が一詐欺サイトのリンクを踏んでしまうと、ウォレット内の仮想通貨やNFTなども盗まれる可能性もあります。
イールドファーミングに関するQ&A
イールドファーミングとステーキングの違いは?
イールドファーミングは、保有している仮想通貨を流動性プールに預け入れることで報酬や利回りを得る仕組みのことです。
一方でステーキングは、コンセンサスアルゴリズムであるPoS(Proof of Stake)に基づいて、仮想通貨の保有量や保有期間に応じた報酬を得る仕組みのことです。
イールドファーミングで得た仮想通貨は課税される?
課税されます。イールドファーミングに限らず、仮想通貨で得た収益は現段階では雑所得扱いとなり、課税対象です。
TVLとは?
Defiには「TVL:Total Value Locked」という概念があります。これは、ロックされた価値の合計と略され、イールドファーミング全体の健全性を表す指標です。
つまり、仮想通貨がDefiやレンディングにどれほどロックされているかを見ることができます。ロックされている金額が多いほど、イールドファーミングが多いことを意味しています。
国内取引所でイールドファーミングはできる?
できません。当記事で解説した通り、国内取引所で仮想通貨を入手後、MetaMaskを通じてDEXへ送金する必要があります。
イールドファーミングのまとめ
イールドファーミングについて解説しました。イールドファーミングは、保有している仮想通貨を預け入れることで、利回りや報酬を得られる仕組みです。それぞれのDEXに特徴がありますので、保有している仮想通貨や特徴に合わせて運用することができます。
一方でハイリターンの代わりにハイリスクを伴うため、ハッキングや詐欺などで大切な資産を失う可能性があることも十分理解して運用する必要があります。
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