今回は、SMA(単純移動平均線)やEMA(指数移動平均線)に次いで使われている、WMA(加重移動平均線)についてご紹介します。
WMAは知名度こそSMAやEMAに劣るものの、欧米ではよく使われている移動平均線で、海外の人が作ったインジケーターなどに度々使われている印象があります。
WMAは直近のデータを最も重視したものなので、SMAやEMAよりも早く反応する傾向があり、移動平均線の中では最もスキャルピングに向いていると言えるかもしれません。
また、出来高の要素を取り入れた移動平均線VWMAについても解説します。
WMA(加重移動平均線)とは
加重移動平均線(WMA:Weighted Moving Average)とは、一定期間の価格を過去になるほど低く、直近になるほど高く評価して算出したトレンド系テクニカル指標、移動平均線の一つです。
SMA(単純移動平均線)は過去のレートの平均値を表しますが、直近の値動きに対して反応が鈍いというSMAの欠点を補うために、EMA(指数移動平均線)が使われるようになりました。
そして、短期トレード向けにEMAよりも更に直近の価格に比重をおいて算出した移動平均線がWMA(加重移動平均線)です。
WMAとEMAは直近価格を重要視している点では同じですが、WMAはEMAよりも過去の価格を軽視しているという点が異なります。
つまり、WMAは移動平均線の中で一番早く反応をする指標で、短期トレード向きと言えるのですが、過去の価格を盛り込んでいないのでダマシが多いという欠点もあります。
WMAは押し目買いと戻り売りを仕掛けるときに有効だと言われています。
比較すると以下のようになります。
SMA:(100+99+98+97+96)÷5=98
WMA:(100×1+99×2+98×3+97×4+96×5)÷(1+2+3+4+5)=97,333
直近の価格になればなるほど、1倍、2倍、3倍…と比重を重くしていく計算方法になっているので、直近の動きに対しては敏感に反応しますが、過去に行くほど鈍感になる仕組みです。
SMA・EMA・WMA違いをまとめる
SMA(単純移動平均線)、EMA(指数移動平均線)、WMA(加重移動平均線)それぞれの移動平均線の特徴を表にまとめてみました。
名称 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
SMA | 最も一般的な移動平均線。 一定期間の平均で算出した平均線。 |
大きなトレンドを掴みやすい。 多くの指標に使われている。 |
直近の相場の動きからは少々遅れをとる。 |
EMA | SMAよりも直近価格を重視した移動平均線。 欧米ではSMAより使われており人気。 |
直近のトレンド把握にも有効。 バランスが取れている。 |
動きに敏感に反応する分ダマシのサインも多くなる。 |
WMA | 価格の重要度を過去<未来に向かって重くした移動平均線。 比較的あまり利用されない。 |
緩やかな上昇・下降相場では最も安定。 スキャルピング向き。 |
レンジ相場や急な変動では機能しなくなる。使ってる人少ない。 |
近年では、EMA(指数平滑移動平均線)を元にした12本の移動平均線を表示させるGMMAも人気があります。
WMA(加重移動平均線)を使ったトレード手法
SMAもWMAもどの移動平均線も基本的な使い方は共通で、チャートと平均線の位置関係からトレンドの方向性や反転を見極めていきます。
WMAは押し目買いと戻り売りに向いてるが、他の移動平均線よりダマシが多くなりがちというデメリットを念頭に置いてトレードするとよいでしょう。
他の移動平均線の中でも比較的短期トレードに向いているという特徴があることを意識して使いましょう。
一本のWMAを使ったトレード方法
価格が移動平均線から大きく離れると、再び移動平均線の近くに戻ってくる傾向があります。
・価格が移動平均線と離れ過ぎた場合、逆張り指標となる。
二本のWMA:ゴールデンクロスとデッドクロス
代表的な売買サインに、ゴールデンクロスとデッドクロスがあります。
反対に短期線が、長期線を下抜ける→デッドクロス(売りサイン)
サポートラインとレジスタンスライン
サポートライン(支持線)とはチャート上で価格が買い支えられ易いポイントとなるラインです。
一方、レジスタンスライン(抵抗線)はチャート上の売られやすいポイントとなるラインのことです。
サポートやレジスタンス辺りに指値注文を仕掛けて売買エントリーポイントにしておくと上手く機能することが多いです。
基本的には他の移動平均線とトレード戦略は同じようなものになります。
どの移動平均線がチャート上で機能しているか、という見極めですね。
WMA(加重移動平均線)の表示/設定方法
bybitのチャートツール(TradingView)でWMAを表示する方法を説明します。
インジケーターアイコン→検索欄に「WMA」とか入力→「加重移動平均線」を選択します。
WMAを複数本表示したい場合は同じ操作を繰り返して表示を増やします。
WMAを調整する方法
インジ名「WMA」→「フォーマット」から設定数値を変更することができます。
「VWMA」とは?
インジケーター「VWMA」は、出来高加重移動平均線というものです。加重移動平均線の考え方に出来高も考慮したものです。次項で説明します。
WMAを消したい時
インジケーターの表示を消したい時には、インジ名WMA→「削除」で消去することが出来ます。
VWMA(出来高加重移動平均)とは
VWMA / The Volume Weirhtd Moving Average(出来高加重移動平均)とは、ボリューム(出来高)で見て人気の高い価格に、より大きな比重を持たせたWMA(加重移動平均線)の一種です。
取引数が大きれば大きいほど移動平均に動きが見られるのが出来高加重移動平均の特徴です。
出来高を考慮した移動平均線ですね。
SMA(単純移動平均線)では一定期間の終値の合計の平均を出しますが、「市場心理を反映させたい」などの特別な目的で、出来高の多い日の価格に加重をかけて取引の多い日の価格をより強く計算結果に反映させた方が市場の状況をよりよく表すという考えに基づいて考案されました。
出来高加重平均では日々の終値を一旦その日の出来高数で掛け合わせて、その日数分の期間内合計をその期間内の総出来高数で割ることで、出来高の多い日や帯に比重のかかった平均値を算出できます。
Σ(終値×出来高)/Σ出来高
VWMAはSMAと併用して使う
VWMAを活用するには、ボリュームを含まないSMA(普通の移動平均線)と比較して使うのが一般的です。
SMAを基準として、2つの移動平均の唯一の違いであるボリューム(出来高)の重み付けの差(VWMAとSMAの間のギャップ)をみます。
一般に、ボリューム(出来高)はトレンドに沿って増加する傾向があります。
つまり、VWMAがSMAを上回っている場合は、出来高が伴っていることを意味し、トレンド継続の意思が強いと判断することができます。
VWMAがSMAを下回っている場合は、出来高が細っていることを意味し、値動きがあったとしてもトレンドはまだ不安定であることが考えられる、という感じで判断します。
VWMAとSMAの見方
- VWMAがSMAを上回っている→トレンド継続
- VWMAがSMAを下回っている→トレンドは不安定
WMA(加重移動平均線)を使う注意点
WMA(加重移動平均線)は、SMAやEMAよりも変動幅が大きくなります。
相場が大きく乱高下している時や横ばいでレンジ相場の時は一般的に移動平均線が苦手とするケースですが、変動幅が大きいWMAはSMAやEMAよりもダマシが多くなり機能しなくなるので注意が必要です。
一般的に、最も多く使われるのはSMA(単純移動平均線)で、トレンド転換の基準として多く使われているのはEMA(指数移動平均線)が主流です。
実際、SMAやEMAの2つの移動平均線が世界のトレーダーの共通認識で使われているので、WMAを使う場面はそんなにないかもしれません。
インジケーターやストラテジー(売買戦略アルゴリズム)で度々採用されることがあるので覚えておきましょう。
まとめ
WMA(加重移動平均線)とVWMA(出来高加重移動平均線)について意味や使い方をビットコインFXで解説してみました。
WMAはいわゆる押し目買いと戻り売りを仕掛けるときに有効ではあるのですが、実際の裁量トレードでは、一番バランスが取れているとされる指数平滑移動平均線(EMA)が、多くのトレーダー(特に上級者)に支持されています。
多くのトレーダーが使っているテクニカル指標こそ、最も機能する確率が高いという相場の法則がありますから、移動平均線はEMAを使用するのが一番スマートかもしれませんね。
「こういう移動平均線もあるんだ!」と理解しておけば
「この相場環境ではWMAが機能するかもしれない」などという応用思考をすることができ、後々役に立つと思います。
短期トレード向きのWMAですが、他にもスキャルピングに適したインジケターとしてはエンベロープなどもあります。併用しても面白いかもしれませんね。
他のテクニカル指標記事
コメント欄
[…] 出典:BitMEX仙人のビットコインFX狂騒曲 […]