ビットコインが大きく下落すると、市場では「もう上がらない」「ビットコインの時代は終わった」といった悲観的な意見が増えてきます。
特に、これまでビットコインを支持してきた著名投資家まで弱気な見方を示すと、投資家心理は一段と悪化します。
しかし、過去のビットコイン市場を振り返ると、興味深い現象が確認できます。
2018年と2022年の弱気相場では、市場全体に強い悲観論が広がった時期に、結果的にビットコインの大底が形成されていました。
2018年には高値から約84%、2022年には約77%の下落を記録しています。

なぜ投資家が悲観的になった時期に、相場は底を形成することがあるのでしょうか。
この記事では、過去2回の弱気相場を比較しながら、キャピチュレーションと呼ばれる現象や、ビットコインの底打ちを判断するための指標について解説します。
ビットコインの大底と投資家の悲観論には関係がある?
金融市場では、価格の下落が長期化すると投資家心理も悪化する傾向があります。
最初は一時的な調整と考えていた投資家も、下落が続くにつれて相場の回復に疑問を持つようになります。
さらに下落が進むと、長期保有者の中にも資産を売却する人が現れます。
こうした売却が続いた結果、売りたい投資家の多くが保有資産を手放すと、新たな売り圧力が弱まることがあります。
その状態で買い需要が回復すれば、価格は反転しやすくなります。
つまり、投資家の悲観論が強まること自体が大底を作るのではなく、悲観論の広がりと売り圧力の減少が同じ時期に起こる場合があるということです。
ただし、悲観的な意見が増えたからといって、必ず底打ちするわけではありません。
実際に大底を判断するには、価格動向や市場参加者の売買状況なども確認する必要があります。
2018年の弱気相場|約84%下落したビットコイン
2017年12月、ビットコインは約20,000ドルの高値を記録しました。

当時は暗号資産市場全体が急速に拡大しており、ICO(Initial Coin Offering)と呼ばれる資金調達手法にも大きな注目が集まっていました。
しかし、2018年に入ると市場環境は一変します。
ビットコイン価格は下落を続け、多くのアルトコインも大幅に値下がりしました。
ICOブームも終息し、資金調達が難しくなるプロジェクトが増加しました。
そして2018年12月、ビットコインは約3,200ドルまで下落します。
2018年のビットコイン下落率

| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 高値 | 約19,800ドル |
| 高値の時期 | 2017年12月 |
| 大底 | 約3,200ドル |
| 大底の時期 | 2018年12月 |
| 高値からの下落率 | 約84% |
| 高値から大底まで | 約12カ月 |
高値から約84%の下落は、仮に100万円分のビットコインを高値で購入していた場合、その評価額が約16万円まで減少する規模です。
これほどの下落が続けば、将来性に疑問を持つ投資家が増えるのも不思議ではありません。
著名投資家もビットコインの将来性を疑っていた
当時、シリコンバレーの著名エンジェル投資家であるジェイソン・カラカニス氏も、ビットコインに対して非常に悲観的な見方を示していました。

2018年11月、同氏はビットコインがゼロになる可能性について、60〜70%との見解を示したと報じられています。
当時のビットコイン価格は約3,700ドルでした。
ところが、その数週間後の2018年12月中旬、ビットコインは約3,200ドルで大底を形成しました。
結果的に、著名投資家による強い悲観論が見られた時期は、長期的な底値に近かったことになります。
もちろん、これは一つの歴史的事例であり、著名投資家の予測が外れたことだけで底打ちの法則が証明されるわけではありません。
それでも、極端な悲観論と大底形成の時期が近かったことは、市場心理を分析する上で興味深い事実です。
2022年の弱気相場|FTX破綻と約77%の下落
続いて2022年の弱気相場を振り返ります。

ビットコインは2021年11月に約69,000ドルの過去最高値を記録しました。
しかし、その後は米国の金融引き締めや暗号資産企業の経営問題などを背景に下落が続きます。
2022年5月にはTerra/LUNAの崩壊が発生し、暗号資産市場全体の信用不安が拡大しました。
さらに同年11月、世界有数の暗号資産取引所だったFTXが破綻します。

FTXの破綻によって、暗号資産取引所や関連企業の資産管理、経営の健全性に対する懸念が一気に強まりました。
ビットコイン価格も下落し、2022年11月には約15,500ドルまで値下がりしました。
2022年のビットコイン下落率

| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 高値 | 約69,000ドル |
| 高値の時期 | 2021年11月 |
| 大底 | 約15,500ドル |
| 大底の時期 | 2022年11月 |
| 高値からの下落率 | 約77% |
| 高値から大底まで | 約12カ月 |
この時期は、ビットコインの価格だけでなく、暗号資産業界全体の信頼性が問われていました。
取引所に資産を預けることへの不安が広がり、暗号資産市場そのものから距離を置く投資家も現れました。
しかし、結果的に2022年11月の約15,500ドルが、この弱気相場の大底となりました。
その後、ビットコインは2023年に回復基調へ転じています。
2018年と2022年の弱気相場を比較
ここまでの内容を比較すると、2つの弱気相場にはいくつかの共通点があります。
| 比較項目 | 2018年 | 2022年 |
|---|---|---|
| 直前の高値 | 約19,800ドル | 約69,000ドル |
| 大底 | 約3,200ドル | 約15,500ドル |
| 下落率 | 約84% | 約77% |
| 下落期間 | 約12カ月 | 約12カ月 |
| 主な問題 | ICOバブル崩壊 | 金融引き締め・FTX破綻 |
| 市場心理 | 暗号資産の将来性への疑問 | 暗号資産業界への信用不安 |
| 大底形成 | 2018年12月 | 2022年11月 |
特に注目したいのは、どちらも高値から約1年後に大底を形成していることです。

また、2018年はICOバブルの崩壊、2022年はFTX破綻という異なる問題が発生していましたが、暗号資産市場全体への不信感が広がっていた点は共通しています。
ただし、2回の事例だけで、次の弱気相場も約1年で底打ちすると判断することはできません。
金融政策や市場参加者の構成、ETFなどを通じた資金流入の仕組みも変化しているためです。
キャピチュレーションとは?大底形成につながる仕組み
ビットコインの底打ちを考える上で重要な概念が、キャピチュレーション(Capitulation)です。
キャピチュレーションとは、相場の下落に耐えられなくなった投資家が、保有資産を手放す降伏現象を指します。

一般的には、次のような流れが考えられます。
第1段階:短期投資家の売却
価格が下落し始めると、短期的な値上がりを期待していた投資家が損失を確定するために売却します。
第2段階:長期保有者の売却
さらに下落が続くと、長期保有者の中にも将来性を疑い、売却する投資家が現れます。
第3段階:売り圧力の減少
売却したい投資家の多くが保有資産を手放すと、新たな売り注文が減少する場合があります。
第4段階:買い需要の回復
売り圧力が弱まった状態で買い需要が回復すると、価格は反転しやすくなります。
ただし、キャピチュレーションが発生しても、その後すぐに価格が上昇するとは限りません。
底値圏で長期間の横ばいが続いたり、さらに安値を更新したりする可能性もあります。
ビットコインの大底を判断するための4つの指標
投資家の悲観論だけでは、ビットコインの底打ちを正確に判断することは困難です。
そこで参考になるのが、テクニカル指標やオンチェーン指標です。
1.MVRV Z-Score|市場全体の割安度

MVRV Z-Scoreは、ビットコインの時価総額と実現時価総額の差を、統計的に評価する指標です。
実現時価総額は、各ビットコインが最後にオンチェーンで移動した際の価格を基に計算されます。
過去の弱気相場では、MVRV Z-Scoreが低い水準まで下落した時期が、長期的な底値圏と重なるケースがありました。
ただし、低い数値になったからといって、必ず価格が反転するわけではありません。
市場構造の変化によって、過去と同じ数値まで低下しない可能性もあります。
2.STH-SOPR|短期保有者の損益状況
STH-SOPRは、短期保有者が移動させたビットコインについて、損益状況を分析する指標です。
一般的に155日未満の保有者を短期保有者として分類します。
重要なのが「1.0」という水準です。
- 1.0を上回る:移動したビットコインは平均的に利益状態
- 1.0を下回る:移動したビットコインは平均的に損失状態
弱気相場では、短期保有者の損失確定が増え、STH-SOPRが1.0を下回る場面が見られます。
その後、1.0を回復して維持できるようになれば、市場心理の改善を示す材料の一つになります。
3.200日移動平均線|長期トレンドの確認
200日移動平均線は、過去200日間の平均価格を示すテクニカル指標です。
ビットコインの長期的なトレンドを判断する際によく利用されています。
価格が200日移動平均線を下回っている場合、長期的には弱い相場環境と判断されることがあります。
一方、底値形成後に200日移動平均線を回復し、その上で推移するようになれば、トレンド改善を示す材料になります。
ただし、移動平均線は過去の価格を基に計算するため、底値を事前に特定する指標ではありません。
4.長期保有者の動向|売却が一巡したか
ビットコインの長期保有者がどのように行動しているかも重要です。
弱気相場では、長期保有者の中にも損失を確定する投資家が現れます。
しかし、その後に長期保有者の売却が減少し、保有量が増加するようであれば、市場の需給改善を示す可能性があります。
ただし、保有量の変化にはウォレット間の移動や保有期間による分類変更なども影響するため、単独で判断するのは適切ではありません。
2026年のシリコンバレー投資家の悲観論は大底の兆候か
2026年10月、シリコンバレーの著名投資家ジェイソン・カラカニス氏が、ビットコインについて強い悲観的な予測を示しました。

同氏は、今後12カ月で57,000ドルまで下落し、過去最高値を更新しないとの見方を示しています。
さらに、ビットコインよりもAI関連への投資を推奨しました。
注目したいのは、同氏が2018年の弱気相場でも非常に悲観的な見解を示していたことです。
2018年には、ビットコインがゼロになる確率を60〜70%と評価していたと報じられています。
その数週間後、ビットコインは大底を形成しました。
ただし、今回も同じ結果になるとは限りません。
また、ビットコインからAI関連株への資金移動は、必ずしもキャピチュレーションを意味するものではありません。
より高い成長率を期待した投資先の変更と、損失に耐えられなくなった投げ売りは、性質が異なるためです。
今回の著名投資家による悲観論は、市場心理の変化を考える上で興味深い材料ですが、底打ちの判断には他の指標との組み合わせが必要です。
まとめ|悲観論は大底のヒントになるが、決定的な根拠ではない
2018年と2022年の弱気相場では、ビットコインがそれぞれ約84%、約77%下落しました。
そして、どちらの時期にも暗号資産市場全体に強い悲観論が広がっていました。
こうした状況で大底が形成される理由の一つとして考えられるのが、キャピチュレーションによる売り圧力の減少です。
しかし、悲観論が強まっただけでは、相場が底打ちしたとは判断できません。
今後のビットコイン市場を分析する際には、次のような点を確認したいところです。
- MVRV Z-Scoreが長期的な割安圏にあるか
- STH-SOPRが改善しているか
- 200日移動平均線を回復できるか
- 長期保有者の売却が落ち着いているか
市場が極端に悲観的なときこそ、感情だけで判断せず、過去のデータと現在の市場環境を比較することが重要です。
ビットコインの大底は、投資家の悲観論だけで決まるものではありません。
それでも、悲観論が広がる局面は、長期的な相場転換の可能性を考える上で注目すべき時期の一つと言えるでしょう。
YouTubeでも詳しく解説
今回のテーマについて、2018年と2022年のビットコインチャートを比較しながら動画でも解説しています。
【BTC大底の予兆?】シリコンバレー投資家が売却…過去の弱気相場でも起きた現象
▼YouTube動画はこちら

参考資料



