【Ethereum Shanghai Upgrade】イーサリアム上海アップグレードとは

仮想通貨コラム

2023.06.292023.08.10

最近ETHで実装された「Ethereum Shanghai Upgrade（イーサリアム上海アップグレード）」について、実施される内容や特徴、今後のイーサリアムにどのような影響を与えるのか紹介します。

この記事の目次

イーサリアム上海アップグレードの特徴
イーサリアム上海アップグレードの内容
上海アップグレードでETH価格上昇の可能性を考察
まとめ
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イーサリアム上海アップグレードの特徴

イーサリアム上海アップグレード（Ethereum Shanghai Upgrade）は、イーサリアムが抱える以下3つの課題への対処を主な目的としています。

レイヤー2ガス代の改善
ビーコンチェーンの進化
スマートコントラクト機能の更新

ガス代の削減

上海アップグレードが導入されると、イーサリアムネットワーク上で構築されたレイヤー2ソリューション（PolygonやOptimism）のガス代が削減されることが期待されます。
レイヤー2ソリューションは、すでにイーサリアムネットワークの速度向上やコスト効率の改善に一定の効果をもたらしていますが、今回のアップグレードによって、トランザクションに関わるガス代がさらに最適化される見通しです。

預け入れETHの払い戻し

ETH Mergeより前には、ETH 2.0ビーコンチェーンのバリデーターになりたい場合、一定量のETHをスマートコントラクトにステーキングする必要がありました。
Merge後も預けたETHはロックされた状態が続いていましたが、上海アップグレードを経た後はロックが解除され、一定の条件を満たすことでビーコンチェーンから徐々にETHを取り戻すことができるようになります。

スマートコントラクト機能の更新

上海アップグレードにおいては、EOF（EVM Object Format）が導入されることで、イーサリアムは引き続きスマートコントラクトをサポートする最大のブロックチェーンネットワークとしてリーダーシップを発揮し続けます。今回の機能更新は、イーサリアムのエコシステムにおける重要な進展となるでしょう。

イーサリアム上海アップグレードの内容

イーサリアム上海ネットワークアップグレードとは、イーサリアムネットワークの次の大きなアップグレードである「Surge」に先立って行われるものです。

イーサリアムの開発者たちによれば、Surgeはブロックチェーンの取引処理速度（TPS：トランザクション・パー・セカンド：毎秒ごとの取引件数）を向上させる目的のアップグレードであり、上海アップグレードはSurgeの実施に向けた準備段階で発生する遅れや問題を最小限に抑えることを目的としています。

イーサリアム上海アップグレードには以下のEIP（改善提案）が含まれています。

Beacon Chainの出金機能
境界とメーター初期化コード
PUSH0命令
ウォームコインベース

Beacon Chainの出金機能（Beacon Chain Push Withdrawals as Operation）【EIP-4895】

この提案により、バリデータは2020年12月にBeacon Chainが導入されて以降、Beacon ChainでステーキングされたETHを引き出すことができるようになります。

最終的には、2年以上ETHをステーキングすることで、非常に少ないガス料金でETHの引き出しが可能となり、さらなる流動性が提供されます。

境界とメーター初期化コード（Limit and Meter Initcode）【EIP-3860】

この提案において、初期化コードの最大サイズは49152に制限され、さらに32バイトのチャンクごとに追加2ガスが適用されます。
これによって、イーサリアムのガス不足による処理の中断という問題がほぼ克服されます。

PUSH0命令（PUSH0 Instruction）【EIP-3855】

このEIPは、スマートコントラクトのサイズを小さくし、コントラクトコードを最適化するために、EVM向けの新しい命令を提案しています。

ウォームコインベース（Warm COINBASE）【EIP-3651】

ある暗号資産取引所と同じ名前ですが、全く関係ありません。
この提案では、ブロックの作成コストを削減し、ビルダーと提案者を分けることを目指しています。これにより、ネットワーク参加者のガス代が減らされるだけでなく、ビルダーを利用して複雑な取引を行うトレーダーは、失敗した取引の費用を支払う必要がなくなります。

上海アップグレードでETH価格上昇の可能性を考察

ETH価格の上昇理由を考察

ETH価格の上昇の要因は以下の2つが考えられます。

ステーキング需要の増加
ガス代の低減・取引失敗リスクの軽減

ステーキング需要の増加

今回のアップグレードによるETH価格の変動を検討する際、ステーキングは重要なポイントです。
強気の見方では、上海ネットワークアップグレードが実施されることでETHの普及率が上がり、それに伴ってさらに多くの投資家がETHをステーキングし、長期保有する可能性があるとされています。

これまでETHの出金ができないことを心配していた人たちが、流動性が低下するデメリットなしに利益を得られるようになることから、イーサリアムのステーキング率が上がると考えられます。これに関連して、大手の機関投資家も5％程度の高い年間利回りが保証された流動性を求めてETHを購入し、ステーキングを開始すると予想されるため、ETH価格の上昇には期待が持てます。

ガス代の低減・取引失敗リスクの軽減

今回のイーサリアム上海アップグレードにより、ガス代の低減から取引失敗リスクの軽減まで、ユーザーや開発者が悩んでいた様々な課題が改善される見通しです。

大型アップデートであるEIP-4844：プロト・ダンクシャーディング（Proto Danksharding）導入前に、これらの問題を解決することで、イーサリアム財団はSurgeアップデートに向けて円滑な準備を進めることができます。

ETH価格の下落理由を考察

ETH価格の下落の要因は以下の2つが考えられます。

証券とみなされる懸念
マクロ経済的な要因

証券とみなされる懸念

弱気の見方としては、米証券取引委員会（SEC）のゲリー・ゲンスラー委員長がビットコイン以外は証券になりうる、と証言していることです。
ゲンスラー氏はビットコイン肯定論者ですが、それ以外のイーサリアムを含む暗号通貨について、肯定的とは言えません。今後何かしらの規制がアメリカで実施される懸念は拭えません。

マクロ経済的な要因

また、Terra LunaとFTXの問題による暗号資産市場全体の下落がまだ完全に危機を脱していないため、今後さらなる影響が出る可能性があるとの見方があります。
さらに、アメリカのインフレ率が目標の2％に遠く及んでいない状況で、FRBが利上げを続けることから、マクロ経済的な要因にも懸念があるとされています。

これらの要因により、2020年12月からETHをステーキングしていた人たちがETHを売却することで流動性が向上し、弱気相場の期間中、ポートフォリオ内の資産を他の資産へ変換するために売り圧力が発生する可能性があると考えられます。

これを想定して、イーサリアム財団は1日に出金できるETHの上限を約4万ETHに設定しました。
これにより、ETHの売り圧が緩和され、ETHの短期的なボラティリティが低減すると期待できるでしょう。

まとめ

現在、スムーズに進んでいるイーサリアムの上海アップグレードに、多くの投資家が関心を寄せています。今回のネットワークアップグレードは、Mergeほど大きな規模ではないかもしれませんが、今後のアップグレードに向けた重要な準備を行っています。

イーサリアムの上海アップグレードでは、ETHのステーキングの仕組みが変更され、個人投資家や機関投資家がビーコンチェーンからの出金が可能になります。これによって、ステーキングに参加する投資家の数が増加するでしょう。このアップグレードにより、イーサリアムはさらに信頼性が高まる有望な資産となり、イーサリアム全体の将来もより明るいものになると見られています。